株式投資とは違って、純金積立は、頻繁に売買するものではありません。しかし、そうとは言え、急激な値動きで大きな含み益が出たときには、一時的に売却して利益確定した後に仕切り直す、というスタンスも有効。そのためには、金のチャート動きの見方を知っておくことが大事です。
FXや株式などに比べると、金の値動きは、決して大きくはありません。もちろん、金も毎日値動きしていますが、この小さな値幅の中で細かく売買を繰り返していれば、手数料分だけでマイナスになる可能性が高いでしょう。
その意味においては、純金積立をするならば、長期投資というスタンスで臨むのが妥当です。チャートを見るときもまた、長期投資家の目で見ることが望まれます。
チャートには色々な種類がありますが、証券会社などが公表している金のチャートの多くは、単純に毎日の価格を折れ線グラフにしたもの、となります。毎日の価格をつないだものを「日足チャート」、週ごとの価格をつないだものを「週足チャート」、月ごとの価格をつないだものを「月足チャート」と言います。
チャートを見ることで、過去の金相場の動きを知ることができます。過去の動きの中で、価格が上昇傾向にあった時期のことを「上昇トレンド」と言い、価格が下降傾向にあった時期のことを「下降トレンド」と言います。上昇トレンドでも下降トレンドでもない時期のことを、「保ち合い(もちあい)」や「横ばい」などと言います。
「日足チャート」「週足チャート」「月足チャート」のどれを見るかによってトレンドは変わりますが、基本的に純金積立は長期資産運用のスタンスとなるため、「週足チャート」か「月足チャート」を参考にすると良いでしょう。
田中貴金属工業がまとめた金価格のデータによると、2000年の年間平均価格は1gあたり1,014円。以後、長期的な上昇トレンドへと入り、2005年には1,619円、2010年には3,477円、2015年には4,564円、2020年には6,122円と、この20年間で実に6倍程度まで上昇しました。2021年に入っても上昇トレンドは止まらず、11月15日現在の価格は7,560円です。
特に2020年に入ってからの上昇幅が大きくなっていますが、その背景には、次にご紹介する「ある理由」があります。純金積立を行っている人の中には、この「ある理由」によって急激に価格が上昇することを予測した人も多いことでしょう。
金相場は様々な理由で上下しますが、特に注目したい理由が、何らかの「危機」です。「有事の金」という言葉がありますが、何らかの世界的な危機が生じた際、安全資産である金が買われ、価格が上昇していく傾向があります。
そのため、たとえば「危機が長引く」と判断できる場合には、長期的な上昇トレンドが形成される、と予測します。
その典型的な例が、2020年から世界を震撼させた新型コロナウイルス感染拡大です。人類にとっては大きな有事であったことから金が買われ、2021年11月現在、過去のほぼ最高値水準を推移しています。
過去を紐解けば、フォークランド紛争、メキシコ債務危機、英国のEU離脱、北朝鮮の核ミサイル実験、米国のシリアへの空爆など、様々な有事において金相場が反応しています。
金相場が動く理由は、有事だけではありません。他にも、需給バランス、円安、年金ファンドの参入、インフレ懸念、オイルマネーの流入、ドル価格とのバランス、米国経済の推移など、様々な理由によって金相場が動きます。 常に世界情勢にアンテナを張り、金相場の今後を見つめていきたいものです。